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医療の点と線

第2回 更年期医療の今後の目標と現状 その1

更年期医療は広範囲で、長期の経過を追っていく必要があります。そのため、理想的には、自分の体質を遺伝子から分析し、生活習慣を無理なく、合理的に、自分に合ったものにすることが必要でしょう。クリニックでは、遺伝し多型の分析をサインポスト社に依頼してきました。また、女性ホルモンがなくなることによって、酸化ストレスが高くなることが予測されますのでFRAS4という機器を用いて、リアルタイムに酸化ストレス度や抗酸化力を測定しています。

2010年4月に講演する機会があり、クリニックでの現状をまとめました。そこで、そのアウトラインを対談でお話しましたので、ここにウィスマー研究所の了解を得て、掲載したいと思います。

リスクに対する健康管理としての更年期医療

Q. 先生の行われている更年期医療についてお話しいただけますか?

当クリニックでは更年期医療の1つの柱として、生活習慣病に関する62の体質遺伝子を調べる遺伝子検査を行っています。特に更年期以降の女性の健康管理においては、まず体質を知ること、そして、生活習慣病のリスクを知ることが非常に重要といえます。

例えば、太りやすい体質・活性酸素が溜まりやすい体質、また、高血圧・糖尿病・血栓症や骨粗鬆症になりやすいかなどを調べ、それぞれの発症・進展を予防するための治療に役立てていくのです。

現在一般的に受けられている市町村や会社の健康診断では、現在の健康状態は分かりますが、10年、20年先の事は分かりません。そこで、遺伝子検査によって自分の体質を知ることで、上手に健康管理をしていきましょうということなのです。

特に女性は更年期を過ぎると体質がグッと変わってきます。女性ホルモンが減ることで動脈硬化も起こりやすくなりますし、タバコを吸っている方はそのリスクが出やすくなります。遺伝子検査によって、1つは体質的にそれらが起こりやすいかどうかを知ることができます。もう1つは健康管理は自ら行うものという動機を持っていただくことができます。

当院では更年期医療を、更年期障害や骨粗鬆症を改善するなど、治療という概念のみならず、健康管理として行うことをコンセプトにしています。「まだ表に現れてはいないが、将来そうなるかもしれないから、今のうちから気をつけましょう」と、健康な方を対象に将来への健康管理を行っていこうということです。

FRAS4によるd-ROMs・BAPテスト導入のきっかけ

Q. 遺伝子検査と併せて活性酸素値を測定されていますが、クリニックにFRAS4を導入されたきっかけは?

結局、遺伝子検査を取り入れた更年期医療をしていく上で、医療者側にとっては将来のリスクを見ることで的を絞った健康管理ができるので、遺伝子検査の重要性を十分に感じられます。ところが、患者さんにとっては理解しにくい部分もあるわけです。まったく何の症状もないのに遺伝子検査で、「あなたはこういう体質です」と言われ、実際の健康診断では悪いところはなく「まったく健康です」となった場合、遺伝子検査の結果に戸惑い、意義を見出しにくくなりかねないのです。

遺伝子検査の重要性を理解していただくにはどうしたらいいか? 少なくとも活性酸素に関しては、FRAS測定中のスタッフ遺伝子検査で活性酸素が溜まりやすい体質かどうかを調べられますから、実際に活性酸素をその場で測定すれば、その整合性がすぐに取れるのです。酸化ストレスが強い、抗酸化力が落ちているなど、数値として具体的に分かれば遺伝子検査も結果も理解しやすくなるわけです。

遺伝子レベルと実際の生体レベルでの活性酸素の状態を見せられるのですから、「もう少し食事や運動に目を向けなくては」、と活性酸素を下げることが患者さんにとっての1つの努力目標にもなっていくのです。

大阪大学先端科学イノベーションセンターの招聘教授である山崎義光先生が行った日本人2万人の遺伝子のデータベースを元に、5tの採血から62の体質遺伝子を調べています。遺伝子検査で活性酸素についての体質を調べた上で、実際の活性酸素の数値を相関させようと考えたわけですが、活性酸素関連の検査を調べたところ、山崎先生のおすすめによりFRAS4によるd-ROMsテスト(酸化ストレス度)とBAPテスト(抗酸化力)を導入することになりました。

更年期の症状を活性酸素で数値化する

Q. 更年期の各症状を客観的に評価されたいということですが。

更年期障害に関していえば、更年期障害とは血管の病変といえるのです。血管が開くからのぼせるし、汗も出るのです。 これらは血管の病変であり、一番初めに酸化ストレスが出てくるはずです。

今までは、のぼせるのであれば、それがひどいのか、回数が多いのかなど、問診からのぼせの状態を評価していました。 このデジタルの時代に、それではあまりにもアナログですよね。もう少しデジタル的に、たとえばd-ROMs値がいくつで、BAP値がどれくらいであると、患者さんの症状が数値化されるのではないかと思い、FRAS4でデータを取りました。とにかく集積をしている段階です。 約400名くらいでしょうか。だんだん見え始めてきたというのが今の状況です。

(次回 第2回 更年期医療の今後の目標と現状 その2へ続く)