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アミノインデックス検査とは
「アミノインデックス検査(AICS)」は「がんのリスクスクリーニング」を血液検査のみでしかも総合的に行おうとするものです。
人間の身体の多くはタンパク質でできていますが、タンパク質は「アミノ酸」という物質の集合です。身体中の遊離アミノ酸はアミノ酸プールと呼ばれ、細胞内、細胞間、血漿中などに存在します。食物として摂取し、消化吸収された遊離アミノ酸はアミノ酸プールに入り、タンパク合成のために使われたり、尿に排泄されたりして、身体中のたんぱく質は2〜3か月程度で置き換わる。遊離アミノ酸は血液中に1グラム存在します。
アミノ酸プールの一部である血漿中遊離アミノ酸濃度の比率は健康人ではほぼ一定に保たれています。しかし肝不全、腎不全、精神疾患では制御機構が崩れるため、アミノ酸バランスが変化します。変化のパターンは臓器や病気によってそれぞれ特徴があります。
味の素が、5種類のがんの患者計約2千人と、健康な人間ドック受診者約1万7700人のデータを基に、がんの種類ごとにリスク判定に最適な計算式を確定したのが「アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS)」と呼ばれる方法です。味の素が独自開発した技術を臨床応用したもので、現在は、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、乳がんを対象としています。
この内容を見るとアミノ酸によって発現が異なり、胃がん、前立腺がん、乳がんに共通して現れるトリプトファン、胃がん、肺がん、乳がんに共通するヒスチジンなどがんに共通するアミノ酸がある一方、乳がんのみに現れるスレオニン、大腸がんに現れるメチオニンのように特定のがん種にのみ見られるアミノ酸が存在します。
実際の検査では、受診者のデータを計算式に入力して「AICS値」をはじき出します。この数値が大きいほど、がんの確率も高くなるというわけです。例えば胃がんの場合、最も高確率とされる「ランクC」(AICS値8〜10)では98人中1人ががんで、リスクは一般の10・2倍と推定されます。
従来のがん検診では、胃の内視鏡検査や胸部エックス線検査、マンモグラフィー、超音波検査、細胞診、大腸内視鏡検査、便潜血検査など、がん種ごとに検査が違い、受診者の負担は大きいものでした。しかしAICSは、1回の採血でこれらのがんのリスクを同時に調べられるので受診者には優しい検査です。
AICSは、血液中のアミノ酸濃度を測定し、アミノ酸濃度のバランスの違いを統計的に解析することで、がんに罹患しているリスクを予測する検査です。
アミノインデックス検査の特徴
(1)血液中のアミノ酸濃度測定による全く新しいタイプの検査です。
(2)一度の採血(5ml)で、複数のがんを同時に検査できます。
(3)早期がんにも対応した検査です。
(4)採血による簡便な検査です。
各AICSの解析対象となるがん種
男性では胃がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がんの合計5種のがんに対するリスクを評価します。
女性では胃がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、乳がん、子宮がん・卵巣がんの合計6種のがんに対するリスクを評価します。
なお、
(子宮がん・卵巣がんについては、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんのいずれかのがんであるリスクを評価しますが、それぞれのがんのリスクについて区別できません)。
アミノインデックス(AICS)の対象者
アミノインデックスがんスクリーニング検査(AICS)は、25歳〜90歳の日本人(妊婦を除く)を対象に開発された検査です。これらの方以外のAICS値は評価対象外となります。
アミノインデックス(AICS)受診前の注意
血液中のアミノ酸バランスに影響を与える可能性がありますので、検査のための採血は、食後後8時間以上あけ、午前中に受診して下さい。
アミノ酸のサプリメント、アミノ酸含有スポーツ飲料、アミノ酸製剤、牛乳、ジュースなども食事と同様にお控え下さい。
妊娠されている場合、AICS値に影響がありますので、検査は受けられません。